収入アップを将来に繋げる。シンプルに実践するお金の仕分け術
収入が増えることは、経済的なゆとりや目標達成への大きな一歩となるはずです。しかし、「収入は増えたのに、なぜか貯蓄は増えない」「気づけば支出が増えてしまっている」という悩みを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
これは決して珍しいことではなく、収入が増えるにつれて、無意識のうちに生活水準が上がり、支出も連動して増えてしまう傾向があるからです。増えた分だけ使ってしまうと、手元に残るお金は変わらず、将来に向けた貯蓄や資産形成は思うように進みません。
せっかくの収入アップを、目の前の消費だけでなく、将来の安心や豊かさにも繋げたいとお考えでしたら、シンプルに実践できる「お金の仕分け術」を取り入れてみましょう。これは、増えた収入を意図的に「どこに配分するか」を決める考え方です。この考え方を身につけ、シンプルな習慣として継続することで、無理なく貯蓄を加速させ、将来への備えを着実に進めることが可能になります。
なぜ収入が増えると支出も増えがちなのか
収入が増えたとき、人は無意識のうちに支出を増やしてしまう傾向があります。その背景には、いくつかの心理や社会的な要因があります。
- 生活水準の向上: 少し良いものを買ったり、外食の回数を増やしたり、趣味にお金をかけたりと、自分へのご褒美や日々の満足度を高めるために支出が増えることがあります。これは自然なことですが、意識しないと青天井になりがちです。
- 安心感からの緩み: 収入が増えたことで、「大丈夫だろう」という安心感が生まれ、お金を使うことに対する意識が以前より緩くなることがあります。
- 社会的な要因: 付き合いでの交際費が増えたり、周囲の人と同じような消費行動をとったりすることで、支出が増えることもあります。
これらの支出は、日々の生活を豊かにする側面もありますが、無意識のまま増え続けると、せっかくの収入アップが貯蓄や将来への投資に回らなくなってしまいます。ここで大切なのは、増えた収入を「何となく使う」のではなく、「意図的に仕分ける」という考え方です。
収入増を将来に繋げる「お金の仕分け」の考え方
マネーミニマリズムの考え方では、「本当に価値あるもの」を見極め、それ以外への支出を抑えることを重視します。これは、収入が増えたときのお金の使い道にも応用できます。
増えた収入を仕分ける基本的な考え方は、シンプルです。増えた手取り額を、以下の3つのカテゴリーに意図的に配分することを考えます。
- 将来への投資(貯蓄・資産形成): これが最も重要なカテゴリーです。将来の大きな目標(マイホームの購入資金、教育費、老後資金など)や、不測の事態に備えるための資金に充てます。
- 現在の生活(必須支出・QOL向上): 家賃や光熱費、食費といった必須の支出や、日々の生活の質を高めるための支出に充てます。ただし、ここでも「本当に価値あるQOL向上か?」を意識することが大切です。
- その他(予備費・使途自由): 緊急予備資金として確保したり、将来の大きな買い物のための特別費として積み立てたり、あるいは趣味や自己投資など、使途をある程度自由に決める分として確保します。
この仕分けで最も重要なのは、「将来への投資」のカテゴリーに、まず最初に、意識的に、一定の割合を配分することです。残ったお金を現在の生活やその他の支出に充てるという考え方を取り入れます。
具体的に実践するシンプル「仕分け」ステップ
それでは、収入が増えたときに具体的にどのように仕分けを実践すれば良いのでしょうか。ここでは、複雑な手続きは不要なシンプルなステップをご紹介します。
ステップ1:増えた手取り額を正確に把握する
給与明細などを確認し、手取り額が以前と比べていくら増えたのかを正確に把握します。額面ではなく、実際に手元に入る金額で考えることが重要です。
ステップ2:増えた分の仕分け比率を決める
増えた手取り額の「何割」を「将来への投資」に回すかを決めます。例えば、増えた分の50%を貯蓄・投資に回し、30%をQOL向上に、20%を予備費に回す、といったように、ご自身の年齢、家族構成、将来の目標、現在の貯蓄状況などを考慮して、無理のない範囲で割合を設定します。
最初は少なめの割合から始めても構いません。大切なのは、「増えた分をすべて使ってしまう」のではなく、「増えた分の一部は将来のために確実に確保する」という意識と仕組みを作ることです。
ステップ3:自動化の仕組みを作る(これが最も効果的です)
決めた比率に従って、増えた収入を自動的に仕分ける仕組みを作ります。これが、この仕分け術を継続させる上で最も強力な方法です。
例えば、
- 給与振込口座から、設定した金額を自動的に別の貯蓄用口座に毎月振り替える設定をする。
- つみたてNISAやiDecoなどの投資信託を、給与が入ったら自動的に買い付ける設定をする。
- 会社の財形貯蓄制度や、自動積立定期預金などを活用する。
このように、お金が増えたら「まず将来分が自動的に引かれる」という仕組みを一度作ってしまえば、あとは意識することなく、お金が着実に貯まっていきます。人間は意思力に頼ると挫折しがちですが、仕組みに任せれば無理なく継続できます。
ステップ4:現在の生活費やその他の支出を「価値基準」で選ぶ
自動で将来への投資分が仕分けられた後の残金で、現在の生活費やその他の支出を賄います。ここでマネーミニマリズムの考え方を活かし、「本当に自分や家族にとって価値あるものは何か?」を問いかけながら支出を選びましょう。
例えば、
- 毎日買うコンビニコーヒーをやめて、その分を自己投資に使う。
- なんとなく入っているサブスクリプションを見直し、本当に利用しているものだけを残す。
- 衝動買いを減らし、本当に欲しいもの、必要なものに厳選してお金を使う。
増えた収入があるからといって、無意識に支出を増やすのではなく、意識的に「価値ある」支出を選ぶことで、満足度を保ちつつ無駄を省くことができます。
シンプルな資産形成への繋げ方
ステップ3で自動的に確保できた「将来への投資」分は、ただ普通預金に置いておくだけでは増えにくい時代です。複雑な金融商品は避けたいという方でも、シンプルに実践できる資産形成の方法があります。
それは、「長期・積立・分散投資」という考え方に基づいたインデックス投資などです。
- 長期: 短期的な市場の変動に一喜一憂せず、数十年といった長い時間をかけてじっくりと資産を育てます。
- 積立: 毎月一定額を投資することで、価格が高い時には少なく、低い時には多く買うことになり、平均購入価格を抑える効果が期待できます(ドルコスト平均法)。
- 分散: 一つの商品や地域に集中せず、様々な資産や地域に分散して投資することで、リスクを軽減します。
つみたてNISAやiDecoといった非課税制度を活用すれば、運用益にかかる税金がかからず、さらに効率的に資産形成を進めることができます。これらの制度は、一度設定すれば自動で積立が行われるため、忙しい方でも無理なく続けられます。
重要なのは、難しい知識や複雑な分析は不要で、シンプルに「コツコツと、長期的に続ける」という姿勢です。
まとめ:収入増を「貯めどき」に変える
収入アップは、あなたの経済状況を改善し、将来の目標達成を加速させる絶好の機会です。このチャンスを無駄にしないためには、無意識の支出増に流されるのではなく、シンプルに「お金を仕分ける」という意識と仕組みを取り入れることが鍵となります。
増えた手取り額を、まず「将来への投資」として自動的に確保する仕組みを作り、残ったお金で現在の生活を賄う。そして、現在の支出も「本当に価値あるものか?」という視点で見直す。このシンプルな習慣が、あなたの貯蓄体質を強化し、着実に資産を増やすことに繋がります。
複雑なことは一切ありません。まずは、増えた収入の一部を、自動で貯蓄用口座や投資口座に振り分ける設定をすることから始めてみましょう。この一歩が、将来の大きな安心と豊かさへの確実な道となります。