マネーミニマリズム

「人からどう見られるか」でお金を使わない。シンプルに自分を満たす消費の見つけ方

Tags: 価値観, 支出見直し, シンプルライフ, お金の使い方, 満足度

貯蓄が進まないのは、「誰か」のためにお金を使っているからかもしれません

「収入はそれなりにあるはずなのに、なぜか貯蓄が増えない」 「将来のために貯めたい気持ちはあるけれど、日々の支出が多くて目標に届かない」

このように感じている方は、もしかすると、ご自身のお金の使い方に「他人軸」が入り込んでいるのかもしれません。ここで言う「他人軸」とは、「人からどう見られるか」を基準にお金を使ってしまう状態のことです。

私たちの周りには、SNSやメディア、あるいは身近な同僚や友人との比較によって、「もっと良いものを買わなければ」「これくらい持っていないと恥ずかしい」といった無意識のプレッシャーが存在します。こうした「他人軸」の消費は、一見すると自分を満たしているように感じますが、実際には心の底からの満足感に繋がりにくく、結果として無駄な支出が増え、貯蓄を妨げる要因となり得ます。

「マネーミニマリズム」の考え方は、まさにこの「他人軸」から離れ、自分にとって本当に価値あるものに集中することでお金との関係をシンプルにし、貯蓄を増やしていくことにあります。今回は、「人からどう見られるか」という視点ではなく、「自分がどうありたいか」を基準にお金を使うための、シンプルで具体的な考え方と習慣についてお話しします。

なぜ私たちは「他人軸」でお金を使ってしまうのか

私たちは社会的な生き物であり、他者からの評価や承認を求めるのは自然な心理です。特に、仕事で一定のキャリアを築き、収入が安定してくると、それに伴って周囲との関係性や社会的な立場を意識する機会が増えます。

こうした心理は、決して悪いものではありません。しかし、この「他人軸」が消費の大きな基準となってしまうと、際限なく支出が増え続けるループに陥る危険性があります。

「他人軸」の消費がもたらすもの

「他人軸」での消費は、短期的には気分が高揚したり、周囲に認められたような感覚を得られるかもしれません。しかし、長期的に見ると、いくつかの問題を引き起こす可能性があります。

  1. 際限のない支出増: 「上を見たらきりがない」という言葉の通り、他人との比較や見栄を基準にした消費には終わりがありません。より良いもの、より高価なものを求め続け、収入が増えても支出がそれ以上に増えてしまう「収入増に伴う支出増」の大きな原因となります。
  2. 貯蓄目標の未達: 無駄な支出が増えれば、当然、貯蓄に回せるお金は少なくなります。将来の大きな目標(マイホームの購入、子供の教育費、老後資金など)に向けた貯蓄ペースが遅れ、漠然とした不安が解消されにくくなります。
  3. 本当の満足感が得られない: 「誰かに良く見られたい」「羨ましがられたい」といった動機で手に入れたモノや経験は、一時的な満足しかもたらさないことが多いものです。自分自身の内側から湧き上がる「これで満たされた」という感覚が得られにくく、次々と新しい刺激を求めてしまう傾向に繋がります。
  4. お金に対する不要なプレッシャー: 「もっと稼がなければ」「もっと買わなければ」といったプレッシャーに常に追われるようになり、お金のために働いているような感覚に陥りやすくなります。

シンプルに「自分軸」のお金遣いにシフトするステップ

では、この「他人軸」から離れ、「自分軸」でお金を使うにはどうすれば良いのでしょうか。複雑な思考は必要ありません。大切なのは、シンプルに自分自身と向き合うことです。

ステップ1:自分の「お金に対する価値観」を見つめ直す

まずは、「何にお金を使うと、あなたは本当に満たされた気持ちになりますか?」という問いを自分自身に投げかけてみてください。

高価なブランド品や最新の家電、高級な食事などが、本当にあなた自身の喜びや満足感に繋がっているのかを冷静に考えてみます。一時的な流行や他人の評価ではなく、自分が心から「良いお金の使い方だった」と思えるのはどんな時か、過去の経験を振り返ってみるのも良いでしょう。

ステップ2:「他人軸」になっている支出がないか具体的に見つけてみる

自分の価値観が少しずつ見えてきたら、次に現在の支出を振り返ってみます。最近の大きな買い物や、毎月・毎年必ず払っているお金の中に、「これは誰かに良く見られたいから買ったかな?」「周囲に合わせて無理している部分はないか?」と感じるものがないか探してみましょう。

例えば、

これらをリストアップしてみることで、「他人軸」の支出がどのくらいあるのかが客観的に見えてきます。

ステップ3:「他人軸」の支出を「自分軸」に置き換える、または削る

「他人軸」だと気づいた支出について、「自分軸」で考えた場合に、そのお金をどう使うのが最も自分を満たせるかを考えてみましょう。

このように、「他人軸」の支出を単に削るだけでなく、「自分軸」の価値観に基づいたより満足度の高いお金の使い方にシフトしていくことが重要です。

ステップ4:使ったお金が自分を満たしたかを振り返る習慣をつける

買い物をしたり、サービスを利用したりした後で、少し時間を取って「このお金の使い方で、自分は本当に満たされたか?」と振り返る習慣をつけてみましょう。

満足感が得られなかった場合は、なぜそう感じたのか、それは「他人軸」の消費だったのではないかと考えてみます。逆に、心から満足できた場合は、それはあなたの「自分軸」の価値観に沿った使い方だった可能性が高いです。

この振り返りを繰り返すことで、自分にとって本当に価値のあるお金の使い方が見えてくるようになり、「他人軸」の無駄な支出を自然と減らしていくことができるようになります。

「自分軸」でお金を使うことで得られる心のゆとりと貯蓄

「人からどう見られるか」ではなく、「自分がどうありたいか」という「自分軸」でお金を使うことは、単に支出を減らして貯蓄を増やすためだけの方法ではありません。それは、お金に対する不要なプレッシャーから解放され、心穏やかに、自分自身の価値観に基づいた豊かな人生を送るための道筋です。

「自分軸」の消費が増えると、自然と無駄な買い物が減り、本当に必要なもの、自分を満たしてくれるものだけにお金を使うようになります。これはまさに、「マネーミニマリズム」の考え方そのものです。

お金の使い方に「自分軸」を持つことは、他人と比較することのない、自分だけの満足基準を持つということです。これにより、他人の動向に一喜一憂することなく、着実に、そして心穏やかに、ご自身のペースで貯蓄目標に向かって進むことができるようになります。

まずは、今日一日、あるいはこの一週間の支出を振り返り、「これは本当に自分のためのお金の使い方だったかな?」と問いかけてみることから始めてみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、お金との関係をシンプルにし、将来への安心と心のゆとりを手に入れる大きな変化に繋がるはずです。