「収入増=支出増」の悪循環を断ち切る。シンプルにお金を貯める習慣
収入は増えているのに、なぜか貯蓄が増えないという悩み
キャリアを積み、収入が増えることは喜ばしいことです。しかし同時に、「なぜか以前よりお金が貯まらなくなった」「収入が増えた分だけ支出も増えている気がする」と感じる方も少なくないようです。
かつては収入に限りがあったため、自然と支出を抑えられていたかもしれません。しかし、収入が増えると、無意識のうちに以前は躊躇していたモノやサービスにお金を使うようになり、生活レベルが少しずつ上がってしまうことがあります。これは「ライフスタイル・クリープ」と呼ばれる現象で、収入が増えても貯蓄が増えない、あるいは以前より貯めにくくなる原因の一つです。
この「収入増=支出増」という悪循環を断ち切り、増えた収入を将来の安心や目標達成のための貯蓄に繋げるには、どうすれば良いのでしょうか。複雑な家計管理や無理な節約ではなく、シンプルにお金と向き合う考え方と習慣を身につけることが大切です。
なぜ収入が増えると支出も増えてしまうのか
収入が増えると支出も増えやすいのは、私たちの心理や習慣と深く関係しています。
- 「これくらいなら買える」という感覚: 収入が増えることで、以前は高価に感じていたものが「手が届く範囲」になり、購入への抵抗感が薄れます。
- 周囲との比較: 同僚や友人など、同じように収入が増えたであろう人たちの消費行動に影響され、自分も同じように消費すべきだと無意識に感じる場合があります。
- 自分へのご褒美: 仕事を頑張った自分へのご褒美として、少し高価なものを買ったり、サービスを利用したりする機会が増えます。
- 習慣化された「なんとなく支出」: 小さな支出でも、積み重なると大きな額になります。収入が増えると、以前は気にしていた小さな支出に無頓着になりがちです。
これらの要因が組み合わさり、気づかないうちに支出が収入の増加分を追い越してしまう、あるいは同程度に増えてしまうのです。
悪循環を断ち切るためのシンプル思考
この悪循環から抜け出すためには、小手先のテクニックではなく、お金に対するシンプルな考え方を見直すことが有効です。
1. 増えた収入を「何に使うか」を意図的に決める
収入が増えたからといって、その全てを「今の消費」に回す必要はありません。増えた収入の一部、あるいは大半を「将来のための自分」に回すことを、あらかじめ決めておくのです。
例えば、給与が5万円増えたとします。この5万円を「全て今月の生活費に充てる」のではなく、「3万円は貯蓄・投資に回し、2万円は自己投資や趣味など、自分の成長や心を豊かにすることに使う」のように、具体的な振り分け先を決めます。
2. 「価値基準」に基づいた支出を心がける
マネーミニマリズムの考え方は、不要なモノや支出を減らすことで、本当に価値あるものにお金を使うことに焦点を当てます。収入が増えた今こそ、「自分にとって本当に価値ある豊かさとは何か」を改めて問い直す機会です。
「なんとなく買う」のではなく、「なぜこれを買うのか?」「これは自分にとって本当に価値があるか?」とシンプルに問いかけます。この問いかけを習慣にすることで、無意識の浪費を防ぎ、価値に基づいたお金の使い方ができるようになります。
3. シンプルな「先取り」の仕組みを作る
収入が増えた分を貯蓄に回す最も効果的な方法は、「先に貯蓄・投資分を確保し、残ったお金で生活する」という仕組みを作ることです。給与が振り込まれたらすぐに、増えた収入の一部を別の口座に移す、あるいは自動積立の設定額を増やすといった方法があります。
これにより、増えた収入を「使ってしまってから残りを貯蓄する」という状態から、「先に貯蓄し、計画的に使う」という状態に変えることができます。この「先取り」の仕組みこそ、お金が自然と貯まる体質を作る上で非常にシンプルで強力な習慣です。
シンプルにお金が貯まる具体的な習慣
上記の考え方を踏まえ、悪循環を断ち切り、シンプルにお金を貯めるための具体的な習慣をいくつかご紹介します。
- 給与振込後すぐに定額を別口座へ移動: ネットバンキングの自動振込機能などを活用し、給与が振り込まれたらすぐに、増額した貯蓄分を指定の貯蓄用口座や投資用口座へ自動で振り込む設定をします。
- クレジットカードの利用明細を「価値」で評価: 毎月、クレジットカードの利用明細を見る際に、使ったお金が「自分にとって価値があったか」「満足度は高かったか」をシンプルに評価してみます。これにより、無意識の浪費に気づきやすくなります。
- 新しい固定費には慎重になる: サブスクリプションサービスや月額課金のジムなど、一度契約すると継続的に支出が発生する「固定費」は、収入が増えると安易に増やしがちです。新しい固定費を検討する際は、「これは長期的に見て自分にどのような価値をもたらすか」を冷静に判断する習慣をつけましょう。
- 年間のお金の使い方をざっくりと計画する: 厳密な家計簿ではなくても構いません。年間でどれくらい貯蓄したいか、増えた収入を何に充てたいか(旅行、自己投資、大きな買い物など)をざっくりと計画することで、漠然とした支出を防ぎ、お金を「使うべきところ」に意識的に振り向けられるようになります。
まとめ:シンプル習慣が将来の安心に繋がる
収入が増えたにも関わらず貯蓄が進まないという状況は、決して珍しいことではありません。それは、収入の増加に私たちの支出習慣や心理が追いついていない状態と言えます。
この「収入増=支出増」の悪循環を断ち切るためには、複雑な管理ではなく、お金に対するシンプルな考え方と、無理なく続けられる習慣を身につけることが鍵となります。増えた収入を意図的に振り分け、自分にとって本当に価値あるものにお金を使うという意識を持つことから始めてみてください。
小さな一歩からでも構いません。シンプルにお金と向き合う習慣を続けることで、着実に貯蓄を増やし、将来に対する漠然とした不安を解消し、心穏やかな日々を送ることができるでしょう。ぜひ、今日からできることから始めてみてください。